あまねく人にイノベーションを!
こんにちは。
●経営デザインシート×ビジネスモデルキャンバスで、わが社の未来をデザインするワークショップ
開催報告のPart2、いよいよ、未来へのストーリーデザインを実体験するステージに入っていきます。*Part1はこちら
13社の経営者・幹部の方を核に、支援機関、BMIA会員がメンバーとなってチームを編成、力をあわせて、知恵を出し合うスタイルをとりました。
プログラム全体は、9つのステップから成っています。
まずは、現在(これまで)の価値創造メカニズム−ビジネスモデルキャンバスにおけるビジネスモデル−の構造化です。
支援機関のみなさん、BMIAメンバーを社員と考え…なんて贅沢なシチュエーションなのでしょう 😛
チーム毎に、BMIA認定コンサルタント(間もなくの方含む)を1名ないしは2名配置、チームのファシリテーターとして力を発揮していただきました。
BMIA認定コンサルタントは、1DayのBMIA認定コンサルタント養成講座(基礎)を受講した上で、さらに約1年間かけて、3つのテーマに関する特訓を経てようやく認定されるものです。
BMIAには、その認定の方のほか、Jr.コンサルタントさんの含め、280名もの「ビジネスモデルキャンバスのプロ」が全国で活動しています。
今後、「経営をデザインする」というコンセプトの全国への浸透は、彼ら彼女らの活躍なくしては、なかなかなし得ないでしょう。
現在のビジネスモデルの構造化は、構造化(可視化)自体が目的ではありません。
そのビジネスモデルを支えているコア・ケイパビリティをつかみ、かつ、その課題(今後の可能性も含む)を浮かび上がらせることにあります。
そのためには…実務的には、「環境分析をして機会と脅威、強み・弱みを…」という客観的アプローチより、描いたビジネスモデルをシステムとしてとらえ、そのシステムへの影響から環境要因を仮説として浮かび上がらせ検証をしていく主体的アプローチの方が、効率的かつ効果的でしょう(私・Okadaとしては、社会システム理論で出てくる構造的カップリングという概念とも関係しているかと思っています)。
なにより…日々事業のことを考えている経営層の方にとっては、その方がしっくりくるでしょう。
そのためには、精緻な環境分析より、適切な質問を、数多く生み出す力が優先されることとなりましょう。今回は、よく使われる「問い」を提示し、チーム内のダイアログを通じて、仮説を設定していきました。下記は、それらの問いの一部です。
これができるのも、ビジネスモデルキャンバスがシステムループ図経営版としての機能を有しているからです。ビジネスモデルを構造化するツール・方法としては多様なものがありますが、この機能を有しているのは、私の知る限り、ビジネスモデルキャンバスのみです。
あと、これは経営デザインシートにはない部分なのですが…
自社の現在のビジネスモデルだけではなく、取引先・お客さんの現在のビジネスモデルも、ビジネスモデルキャンバスを使って、構造化していただきました。これは、この後のステップでいきてくることになります。
さあ、課題も見えてきました。で、未来をどうするかですが…、
本来は、機会の探索にじっくり取り組むところですが、今回のワークショップはまずは全体のプロセスをひととおり体験することを優先、ここでは考え方のポイントのみにふれました。
ここでも実務的に重要となるポイントは、未来を分析して予測するのではなく、多様な未来の可能性を感じ取り、その多様な可能性を有する未来に主体的に働きかけて、自ら未来を創っていくスタンスでしょう。
そこで最も重要となるのは、我が社は、自分は、どういう未来を創っていくのかの「主観」ですが、この主観は、デカルトの二元論的主観ではなく、むしろ現象学的主観です。ここらのことはとても大切なところなのですが…これ以上ふれると、やはり膨大なボリュームになりますので、ここでは省きます 😉
現象学的主観は、相互主観性のプロセスで磨き上げられ、客観(これも二元論的客観とは異なる)に至ります(ここらのところは、白状しますと、BMIAシニアアドバイザーで多摩大学大学院教授の紺野登先生の受け売りです^^;)。
当然のことながら、最も重要な“相互”のお相手は、想定するお客さんということになるでしょう。
あらゆるモノ・サービスがコモディティ化して溢れている現代においては、新たな「顧客にとっての価値」(価値提案:Value Proposition)の創造が、“わが社の進化”−新たな価値創造メカニズムの創造−にとっては必須となります。
ここで求められる思考のあり方が、デザイン思考であり、経営デザインシートでも活用を強調されているものです。
ただ…正直、経営デザインシート単体だと、この点が弱いということは否めないところでしょう。
ということで、ここで活躍するのが、もうひとつのキャンバス−バリュープロポジションキャンバスです。
ポイントは、まず想定する顧客の問題を構造化した上で、価値提案のアイデアを創出するという視点です。経営デザインシート関連の報告書・説明書でもさかんに強調されているディマンドサイド・ロジックのあり方ですね。
そのために最も大切なことは、ここまでのビジネスモデルならびに、それを支えてきたリソースにとらわれない、むしろ一旦手放すことでしょう。
詳細は省きますが、従来のリソース発で未来のビジネスモデルを考えることは、過去の延長線上で未来をとらえるフォアキャストアプローチとなりがちで、VUCAの現代には適さないどころか、むしろ致命傷につながるリスクをも抱えることになりかねません(サクセストラップ等)。
もし、これまでに、過去の知財(知識資産)をリスト化していた場合は、あえてそのリストを一旦は金庫にしまうぐらいの意識が丁度いいでしょう。
いらないと言っているわけでも、捨てろと言っているわけでもなく、一旦片付けて忘れて、ピュアにディマンドサイドに立つということです。リストは、この後のステップで活用すればいい。
リストがまだないなら、「資産を洗い出した後に未来構想を」というスタンスをとる必要はありません。ここで必要なのは、現在の自社を掘り下げることより、まずは未来のお客さんに共感すること、そこに最大限集中した方がいいでしょう。ディマンドサイド・ロジックです。
詳細な資産リストが必要となる場合は、この後の工程でも十分可能だし、むしろその方が、指向性をもって資源探索ができるので、むしろ好都合という面もあるでしょう。
今回は、まさしくディマンドサイドに身をおいていただくため、各企業の方に、「未来のお客さん」になりきって演じていただき、インタビューを通じて状況を観察、その中から情報を得、かつ推論もまじえ、チームで力をあわせて顧客の問題を構造化していきました。
高橋総監督(参事官補佐、画像左)も興味津々 🙂
その上で、新たな価値提案をデザインし、
それをもとに、未来の新たな価値創造メカニズム−ビジネスモデルをデザインしていく。
どうですか、この身の乗り出し様!真剣さ、アツい思いが、ビシバシ伝わってきます 😛
ディマンドサイド・ロジックであること、過去を一旦手放していることから、描いた未来のビジネスモデルは、現在のそれとは非連続性の高いものとなっています。
当然のことながら、現在の自社とは相当程度のギャップがあるはず、それをいかに埋めていくのかの作戦が、いわゆる今後の戦略となります。
あと、その戦略構築よりさらに重要なことがあります。
それは、この問いに対する回答を模索し、明らかにすることです。
人は、過去−現在−未来とつながる一貫性のある物語の中で、セルフアイデンティティを獲得します(物語的自己同一性というそうです)。
一方では、企業が未来も社会に必要とされ続けるには、常に自らを変化させていく必要があります。まさに、今回浮かび上がらせた非連続の新たなビジネスモデルを、連続して創造し続けていかなければならないわけです。
「一貫性のある物語」と「非連続の連続」、このトレードオフにあるふたつを、同時に成り立たせることが経営層に求められているわけです。しかも、そのタームは今後加速度的に短くなっていくことが予想されます。
「我が社は何者か」を問い続け、かつ、その回答としての“意味”をつくる力−センスメイキング力は、今後、これまでとは比較にならないほど重要性を増してくるケイパビリティでしょう。
今回は戦略構築、そして、この「存在意義の再定義」については、宿題として自社にお持ち帰りいただくこととしました。
さあ、これで、13社の「未来構想の最初のプロトタイプ」が生まれました。
下記は、その一部です。
*実際の事業構造が描かれているため、守秘義務を遵守し、付箋部分はボカしてあります。
「これまでの価値創造メカニズム」を表現するBMC、「これからの価値創造メカニズム」を表現するBMCを、それぞれ1枚の大きな付箋に見立て、経営デザインシートの該当箇所にそのまま貼り付けたのですが…見事なまでに、全くと言っていいほど違和感がなく、ごくごく自然です 😛
Part1でご説明した、“経営デザインシートとビジネスモデルキャンバスの親和性の高さ”ゆえのことですね。
あと…ひょっとしたら、今、このブログを読まれている方の中には、これらをご覧になられて「え?こんな粗いものでいいの?」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。
中には、こんな感想を持たれた方もいらっしゃるかもしれませんね。
いいのです、このレベルで…というより、全体感をつかみやすい、このレベルの方がいいのです。
Part1でも述べましたが、経営デザインシートもビジネスモデルキャンバスもデザインツールであり、仮説−実践−検証のスパイラルアップで前進していく「プロトタイピング」のあり方が妥当です。
その際、必要なのは、最初のプロトタイプであって、「正解」である必要はないし、そもそも最初から「正解」を求めること自体が、デザインのプロセスには適さないでしょう。
さる書によると、プロトタイピングは、精緻につくった一発勝負よりパフォーマンスがよいという実験結果もあるとのことです(カリフォルニア大学サンディエゴ校スティーブン・ダウ氏の実験と)。
精緻なデザイン・設計は、スパイラルアップの過程の中で取り組んでいくものです。
私たち現代人のかなりの割合が、これまでの教育課程、ビジネス経験の中で、「正解を出す」ことこそ是との価値観をすりこまれています。上記のような「正解おじさん」は、誰しもの中にも存在しています。もちろん、私の中にも。
それはそれで必要な価値観であり、それが役立つシーンは無論あります。しかし、「今はないものを生み出す」構想段階においては、むしろ逆機能となることが少なくないでしょう。
この段階では、私たちの中にいる「正解おじさん」には、お昼寝しておいていただくことにしましょう。 😉
最後に、ふりかえりです。
以下は、アンケートでいただいたご感想です。
・非常に面白かったです。地方の中小零細社長に無理なく参加しやすいように半日で全ての枠を埋められるようなワークショップにしていきたい。
・経営デザインシートとビジネスモデルキャンバス、ワクワクする組み合わせですね!使っていきます!
・この内容だと3日ぐらいのワークショップもしくは講座になるのでは?
・企業さんが困らないよう、2時間コースの補習の機会を作りたいです!
・貴重な機会をありがとうございました。 参加できて良かったです。
・明日から未来思考でデザインしていきます!ありがとうございました。
・プロセスが面白くワクワクした。
・説明もわかりやすく、ワークショップも豊富だったので、とても充実した時間を過ごせました。
・半日では駆け足で大変でした、もう少しゆっくりどっしり落ち着いてやりたかったです、でも満足度は高いです
・非常に有意義なワークショップでした!ありがとうございました
・いろいろな人と混ざりながらBMCとKDSを実践的に演習できて大変良かった!
・続きをしたい!
・楽しく学べました。ありがとうございます。
・お疲れ様でした!
・ありがとうございました
こちらこそ、ありがとうございました!!!
みなさん、最高でした!!!
今回みなさんのおかげで得ることができた学びをもとに、さらによきプログラムへとスパイラルアップさせ、そしてみなさんとも力をあわせて、全国に、世界に、「経営をデザインする」あり方を広げていきたいと考えています。
今後とも、よろしくお願いします!!!
それでは。
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