あまねく人にイノベーションを!
こんにちは。

さる商工会議所指導員さんから、嬉しいご連絡をいただきました。
約1年前、その指導員さんからご連絡をいただき、少しお手伝いさせていただいた方が、もう間もなく、念願のカフェをオープンして開業なさるとのことでした。

下記は、その方、および会議所指導員さんと共に3人で描いた、その方の想いをビジネスモデルのカタチとしてデッサンした際のビジネスモデルキャンバス(ファーストキャンバス)です。
*例によって、内容はボカしてあります、悪しからず。

この時、ご本人はまださるカフェにお勤め中、まだ具体的ビジネスモデルをどうするということはお考えではない構想レベルで、解像度という点では、「これから」というところでした。
というところで、まずは、ご本人の中にあるものを、ビジネスモデルキャンバス(BMC)を使って可視化・構造化していきました。

このケースの最大のポイントは、顧客価値提案(Value Proposition:VP)の解像度・オリジナリティの向上でした。
よくありがちなことですが、VPとして「よく耳にする(一般的・コモディティ化している)形容詞的なもの」を想定されているケースが、飲食・美容サービス業の創業案件ではよく見受けられます。
認知しやすい機能・特性ではなく、「おいしい」「キレイ」「カワイイ」「きもちいい」といった感覚がポイントの業種なので、どうしてもそうなりがちです。

ただ、あらゆるモノ・サービスがコモディティ(ありふれたもの)化し、飲食・美容サービス業もその例外ではない(むしろコモディティ化業種の代表?)現代において、VPが曖昧模糊or一般的なままで開業することは、極めて大きな(最大の?)リスク要因となりえます。
ということで、この時は、そのリスク除去に再注力しつつ、ペタペタしていきました。

キーワードは「映像化・可視化」。
Value Proposition Canvas(VPC)は使わずBMCだけを使いましたが、顧客セグメント(CS)にはたった一人の具体的顧客像を設定、その生活シーンをドキュメント映画の様に再現しつつ、抱えているジョブを想定、その上で、VPの言語化と主要活動(KA)の可視化を同時に行なっていきました。
考えているランチプレートも、簡単ではありますが具体的に絵で描き(画像中、円が描かれている正方形ふせん)…。
初期のデッサン時には、言語化が俄かには難しいケースが少なからずありますが、その際は、この「映像化・可視化」(実際に絵で描くことも含め)テクが有効となることが結構あります。

映像化・可視化テクによりVPとKAの解像度があがれば、それと一貫性を保ちながらの、他の部分(KR/KP/CH/CR/C$/R$)、および、それらの関係性のデザインがやりやすくなります。

画像のBMCはそうやって描かれたものですが、ここで大切なことがあります。それは、当面のアクションシナリオの設定です。
仮説とはいえ、ビジネスモデルの解像度があがっていれば、たとえ店舗物件選定や資金調達のかなり前であっても、創業に向かって「なすべきこと」の解像度があがります。
結果として、創業までの期間短縮、成功確率の向上も見込めるでしょう。
事業計画を軸とした場合、なかなかこうはいきません(事実上無理と言ってもいい?)。
このケースの場合、ご本人はまだ勤務中でしたので、描いたビジネスモデルキャンバスを設計図として、その勤務の中で取り組めること(なすべきこと)を数点具体的に設定し、この日のお手伝いを終えました。

その後、私自身はこの案件にはかかわっていなかったのですが、ご本人と指導員さんとの間でこのBMCが共有され、アクションシナリオにそって準備が進んだ様子です。
で、このビジネスモデルに適した物件が見つかったことを機に、金融機関にもご相談、調達も決まったとのことでした。
指導員さんによると、「融資申込時に必要な創業計画書も、このビジネスモデルキャンバスを活用して、ご一緒に組み立てていった、とても書きやすかった」とのことでした。

いくら地域に身近な商工会議所さんであろうと、創業を考え始めた初期に、いきなり相談に行くのは、ご本人にとってはなかなか心理的にハードルが高いものがあります。ましてや、他の公的支援機関さんや金融機関さんとなると、そのハードルはさらに高くなることがしばしばです。

また、支援機関(商工団体さん・金融機関さん含む)側としても、限りある人的・時間的・物理的・能力的等キャパシティの関係から、創業に関心を持ち始めた方や初期起業希望者の方に、なかなか対応し難い事情もあることは事実でしょう。
中には、言葉では表現していなくても、事実上、創業直前の方のみを支援対象としているに近い機関も、正直少なくないでしょう。

ただ、一方では、我が国の開業率を今以上に上げるには、もうこの層の方々に対する支援を強化するしか、伸びしろが見込めないという調査結果も、中小企業庁からの資料で明らかにされ、施策体系のあり方の歴史的転換がなされようとしています(これについては、後日ご説明します)。
このトレードオフを、どう解消していくか、それが、創業支援業界の大きな課題として今後クローズアップされてくることは必至です。

その時、今回の様な、「ビジネスモデルキャンバスを共通言語として共有しつつの、初期からの創業支援」は、ひとつの有効な解決策となることでしょう。
支援側の負担を最小限にしつつ(今回の事例の様に、むしろ低減も?)、支援対象を拡大できるー結果として、成果としての数・質が向上する効果が見込めます。

特に支援機関関係の方のご参考になればということで、ご紹介させていただきました。

それでは。