あまねく人にイノベーションを!
こんにちは。

先日来、「イノベーションのプロセスの今−昔」について、いろいろ妄想が膨らんできて、創作意欲がとまらず…^^;
ということで、せっかくなので、この機会について自分なりの「現時点の考え」をまとめてみました。
それにあたっては、私自身のこれまでの体験だけでなく、多くの識者の、特に下記の方々およびその文献にある貴重な知見を参考にさせていただきました。
まずは、お礼申し上げます。
●Gijs van Wulfen 師−「FORTHイノベーションメソッド公認ファシリテーター養成講座」より
●竹林 一 氏(オムロン社)−「起承転結人材論」より
●佐宗 邦威 氏(biotope代表取締役)−「人生に、仕事に効くデザイン思考とその先のアート思考」(サイエンスシフト)より

考えてみると…従来のイノベーション・プロセス、とりわけ創業におけるそれは、長い間、こんな感じだったのではないでしょうか。↓

アイデア出し(Ideation)/開発(Development)/事業化(implementation)/市場投入・運営(Launch・Operation)の順で、4つのステージから成るプロセス。
それぞれの内容は、主に上図のようなものだったでしょう。

その内容からすると、最もハードルが高いのは、やはり事業化ステージ、および、スタート後初期のオペレーション、特に前者。やはり、資金調達その他で、第三者の協力をとりつける必要がありますし、そのためにはプランニング−事業計画に基づいてのプレゼンテーション・説得は必須、第三者の厳しいクリティカルな評価を突破することが求められますので。
このようなことに慣れている創業者は非常に少なく、また慣れてはいたとしても、相手があること、その動向は読み難く、他のステージとの関係において相対的にみても、確かにハードルは高かったと考えられます。
ということで、創業支援、とりわけ、公的な創業支援施策は、そのほとんどが、「事業化ステージ」のものに集中してきました。それが、以前の時代背景では、合理性が高かったと言えましょう。

で、「アイデア出し」ステージ、「開発」ステージ(多くは商品・サービスの開発)は、ほぼ全てが本人の自助努力で取り組むべきもの、言い換えるなら、創業支援を受けるにあたっては、画像中右側の部分は、本人が整えておくことが前提とされていたとも言えます。
多少典型的表現をすれば、実態は、下図のような状況のケースが多かったのではないでしょうか。

以前は、これでなんとかやれた時代でもありました。
簡単に言うと、基本的には成功した前例というお手本があって、多少の差別化と、市場投入後の運営、とりわけ、マーケティング(プロモーション・営業)活動の工夫と努力で、なんとか軌道にのせることができる可能性もそこそこあったと、過去をふりかえれば思えます。
ところが、近年、この伝統的なプロセスではうまくいかないケースが圧倒的多数となってきた…。

なぜか…?↓だからですね 😉 

時代がかわり、環境もかわれば、当然、イノベーションのやり方も変える必要があるのは理の当然、創業だけが例外ということはありえないと認識した方が妥当。
では、その「新しいやり方」におけるキーポイントは何か?
様々な見方・見解があるでしょうが、私は、この3つではないかと思っています。

特に、新たな価値提案(Value Proposition)の創造は、最重要事項です。
コモディティ化が極度に進展した現代では、商品・サービスレベルの多少の差別化は、消費者・ユーザーにとってはほぼ意味をなさないというケースが多く、また、情報爆発下マーケティング(プロモーション)効果が大きく落ちる傾向にある中、大なり小なり「顧客価値」自体を新たに創造することは、必須となります。

では、具体的にはどうするべきか…4つのステージの存在自体は変わらないとしても、少なくとも、それぞれにおいて「なすべき事項」を変更することは必須、また、4つのステージからなるプロセス内のウェイト付けも、変更が求められるでしょう。

特に、これまで、創業支援の対象外、ないしは前提とされてきたIdeation/Developmentステージ(向かって右半分)は、大きく「なすべき事項」が変わると共に、極めて重要なステージとして位置付けられることとなります。新たな価値の創造は、このステージが直接的に影響するからです。

創業支援においても、その新たな「なすべき事項」をクリアするための、創造的メソトロジーの提供と、その支援活動強化が、必然的に求められることとなります。
昨年あたりから、中小企業庁発でも、「創業機運醸成」の必要性が唱えられるようになりましたが、その背景には、この時代的変化があることをきちんと認識し、かつ、提供する支援プログラムの質自体を革新しない限りは、残念ながら、期待するほどの成果は見込み難いでしょう。
若年層への取り組みも大切なことでしょうが、プログラム自体の質的リニューアルを伴ったものでないと…。従来の支援プログラムを若年層へと対象を広げる程度では、せっかくの努力も十分報われるものとはなり難いのではと。

少し話が脱線しましたが…^^;
ここで忘れてはいけないことは、この4つのステージは、それぞれ適する「人材のタイプ」、そして、その思考スタイルも視点も異なるということを理解することであり、また、そのバランスをとることの重要性を理解することです(竹林さんの「起承転結人材論」より)。
ごく稀に、これら4つ全てをこなせるスーパーマンのような起業家はいますが、やはり、事業が順調に伸びていくスタートアップの多くは、起業家が割り切って演じ分けている、ないしは、チーム(社外支援者含む)として補完しているというケースが、圧倒的多数派と思われ、やはりこのバランスは重要と思われます。

ここで、問題になりうるのは、「転」人材がその視点のまま、妄想設計をしている「起」人材をみると、ともすると「遊んでいる」ように見えることがままあること。

ましてや、「転」人材がよってたかって、ないしは優位的立場で↓の様に、妄想設計中の人たちと接すると(もちろん悪気や批判する意図など全くなく)…

となるケースも頻発しがちです、というか、日本全国あちこちで、現在進行形で日々発生している事象でしょう。 😥 
このメカニズムが、実は、イノベーションを阻んでいる大きな要因となっていることは、ほぼ間違いないところでしょう。もちろん、創業においても…。

では、さらに具体的に、各ステージにおいて、どういうことをすればいいのでしょうか。
P&GやSONYで新規事業を創出し、現在、biotope(株)代表取締役として、多くの企業のイノベーションに関わっている佐宗邦威氏は、下記、4つの思考を適切に使うことが必要となさっています。

私、この知見には魅せられました!なるほど〜です!

これは私のアイデアでもあるのですが…やはり、InnovationはLoopだと思うんです。
そして、そのループは、To be continueの、断片的ではない、一連の流れるように連なったInnovation Storyだと。
となるとですね、そのループを円滑にまわすためには、視点も思考スタイルも違う「起・承・転・結」人材の間で共有できる、共通言語が絶対といっていいほど必要
その共通言語としてピッタリなのが、ご存知、ビジネスモデルキャンバスです。

ビジネスモデルキャンバスは、下図にあるとおり、4つのステージそれぞれに、適切な使い方を「使い分ける」ことが可能です(それぞれの詳細は、また別の機会に)。

*前図ではデザイン思考となっていたところは、システム&デザイン思考と変更しています。その理由については、また別の機会に。

ひとつのイノベーションを1枚のキャンバスで描いてそれを共有化する、そして、4つのステージそれぞれにおいて、適切に使い分けて、そしてまた共有する…
その効果は、極めて大きなものがあるでしょう。

その際、ポイントとなるのが「承」人材。
このポジションは、「起」の思考・言語も、「承」の思考・言語も使いこなせ、かつ両者間を翻訳、つなげる能力が求められます。
この「承」人材がビジネスモデルキャンバスを共通言語として使いこなし、イノベーションのガイド役機能を果たせるか…

今後の創業支援業界においては、この能力を有するガイド役たる「承」人材を多く育成できるかどうかが、成果をわける大きな分岐点になる…
そう強く思うと共に、その中で、dラボも微力をつくしていかなきゃ…と思う、今日この頃です。

大長文、最後までおつきあいいただき、大変ありがとうございました。

それでは!