あまねく人にイノベーションを!
こんにちは。

下の画像は、さるサービス業を営む企業さんの、近未来に向けてのビジネスモデル進化ストーリーを、同社社長さんと共に描いたビジネスモデルキャンバスです。
*生案件につき、例によって、ふせんの内容はぼかしてありますので、ご了承ください。この後の解説で、デザインプロセスをつかんでいただければと思います。

クリーム色ふせん部分が、現在のビジネスモデルに関するところ、ピンクふせん部分が、今後取り組むことに関するところです。

起業(法人設立)直後の混乱期をくぐりぬけ事業も軌道にのった感がするところ、
ただ、この分野の市場は全体としては当面は拡大基調が見込めるものの、その分新規参入事業者・既存事業者入り乱れての競争激化は避けられないところです。
加えて、事業に影響を与える社会的変化も看過できない動きを見せていて、それらを緑のふせんに簡潔にまとめ、CS(顧客セグメント)の下部に記しています。

今後の持続的成長を実現するために、さて、どうするか。
以下、進化ストーリーを理解しやすいよう、矢印を付記した下記画像に基づき、説明します。

このケースの場合、市場全体が伸びているということですので、既存のビジネスモデル自体を活かしたまま、社会環境変化に伴い新たに顧客側に生じ始めているインサイト−Jobs/Pain(CS&VPのピンクふせん)を解決する新サービスを別に開発(KAのピンクふせん)します。
開発といっても、大がかりなものではなく、わりと細かなサービスをバンドル化したもの(低単価)、現スタッフの中に、ちょうどそれに必要なリソースを有する方がいらっしゃいましたので(既存のビジネスモデルには直接は関係ないリソース)、それを活用しできるところからはじめ(①矢印)、外部パートナーとの連携も図りつつ(①’矢印)幅を拡大、顧客に提案(②②’矢印)、訴求します(③矢印)。

この新たなインサイトは既存顧客の間にも生じており(だからこそ、機会に気づけたわけですが)、新サービス立ち上げ時は、既存顧客への提案から始まることになりますが、既存顧客からの新規ご紹介客はこれまでもそこそこあり、新規顧客開拓効果は十分見込めるものと期待できます(④矢印)。
すなわち、新たな顧客価値を提案する新サービスをフロントエンド、既存サービスをバックエンドとしたビジネスモデルへと進化していきます。

既存サービスも新サービスも、リピート性は高い性質のものですので、顧客のLTV(Life Time Value:生涯価値)の向上が見込め(⑤矢印)、結果、利用者数の増大とLTVの向上の相乗効果による収益の拡大が期待されます(⑥矢印)。

一方、収益の拡大に比例してコストもまともに上昇するようでは、持続的成長を実現するための適性利益の確保はなかなかに困難です。
特に労働集約型サービス業の特性を考えると、その対策は必須となります。
ということで、ここでITを活用してのローコストオペレーションを具体的に検討していくこととなります(⑦矢印)。
結果として、生産性の向上を伴いつつの、市場・顧客の変化に適応するビジネスモデルへと進化する・・・というシナリオです。

いかがでしょうか?
もちろん、こんなにうまくスンナリと事が運ぶとは思いませんが(笑)、仮説とは言えども、シナリオを考えつつ取り組んでいく場合と、そうでない場合とでは、やはりその後のアウトカムレベルは変わってくるのではないでしょうか。

かつて、かの楠木建先生は、戦略はストーリーとして組み立てられていると著書に記されました(『ストーリーとしての競争戦略』)。

上記のシナリオは、まさにストーリー、すなわち戦略です。
考えてみれば、企業戦略とビジネスモデルは、切っても切れない関係なわけです。
となると・・・ビジネスモデルキャンバスを使って戦略デザインも行うあり方は、極めて合理的ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

ビジネスモデルキャンバス、つくりはとてもシンプルですが、そのシンプルさの中に、とてもとても奥深さを感じます。
多少でもご参考になれば、幸いです。

それでは。