あまねく人にイノベーションを!
こんにちは。

昨年末からここまで、ずっと私を虜にしている経営学理論があります。
今回は、それをご紹介します。

ダイナミック・ケイパビリティ論

です。
結論から言いますと、VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の現代における経営実務を考えるにあたって、ドンピシャでmustな理論と言えるでしょう。
もちろん、ビジネスモデルキャンバスによるビジネスモデルデザインとの相性も、ドンピシャです。

この分野に取り組んでいる研究者は近年国内外を問わず多くおられ、発表論文も多数、今、最もHotな経営学理論とされているようです。
代表的研究者として知られるのが、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクールのデビッド・J・ティース教授、その関連著書としては、代表的著書として、下記の2冊があります。


ダイナミック・ケイパビリティとは、ひらたく言うと「変わり続ける力・変え続けることができる力」と理解していいでしょう。

これまで「持続的競争優位」という言葉を耳にされた方は少なくないでしょう。
「10年続く企業の持続的競争優位の源泉は・・・」という感じで使われるケースが多くあります。

従来の経営学では、その“源泉”を、
●市場におけるポジショニング(外部環境分析からのポジショニングアプローチ)
●自社が有する有形・無形の経営資源(内部環境分析からの資源ベースアプローチ)
に求めるのが一般的でした。
後者の資源ベース論は、前者のポジショニングアプローチの反証として出てきたという経緯があることから、「持続的競争優位」という言葉は、どちらかというと、後者のスタンスにたつ方が口にされることが多いのかな?というのが、私の感ずるところです。

いずれのアプローチもなるほどというところはあり、結論としては「どちらも大事ですよね」というところなのですが、両方とも、環境が比較的安定している静的状態を前提としていることから、VUCAが顕著な近年においては、その限界性が指摘されています。
その間、資源ベース論においても、いわゆる「強み」の概念は「個別資源」から、それら個別資源を組み合わせ活用する力−「ケイパビリティ」へとフォーカスポイントが移行していき、連れて「強みを活かして」とか「強いところをさらに強化し」等の論が勢いを増していきました。しかし、近年の環境変化で、その「強み強化」も、負の面が目立つケースが顕著になってきました。皮肉にも、強みを強化すること自体が、「変化に対する足かせ」となるケースです。

考えみれば、なるほどのことです。
そもそも「強み」とは、それを「強み」とできる外部環境があってのこと、それがコロコロ変化する、かつ複雑、何が何だかよくわからないVUCAの時代においては、「今日の強みは明日の強み」とは必ずしも言えないどころか「明日の弱み」にすらなりうるわけです。
その時、「強み」に対する依存度が(経済的に、精神的に)高いと・・・これが自社の変化を遅らせるor妨げかねない・・・
確かに、そういうケースは、企業規模を問わず、とても多く見受けられます(大企業のそれは、ニュース等で目立ちますね)。

となると、個別経営資源も、ケイパビリティも、今や持続的競争優位の源泉とは言い難くなります。
そこで、従来の資源ベース論の反証として出てきたのが、個別経営資源やケイパビリティを連続的・断続的に再編集する能力を持続的競争優位の源泉と考えるダイナミック・ケイパビリティ論です。
個別資源もケイパビリティも重要だけど、もっと重要なのは、それらを統合し、(時には大胆に)継続的に再編集していく能力−ダイナミック・ケイパビリティの方が、より重要な、上位に位置する概念だということですね。
このあたりの資源ベース論の進化については、この書で、実にわかりやすく説かれています。

「なるほど〜、じゃあ、そのダイナミック・ケイパビリティを自社が身につけるにはどうしたらいいの?」

そういう疑問がわいてきますよね 🙂 
それについて、ならびに、このダイナミック・ケイパビリティ論が、どうしてビジネスモデルキャンバスを活用したビジネスモデルデザインと相性ドンピシャなのかについては、次回また、述べさせていただきます。

それでは。